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Suoni Sereni 森の音、水の音


水に潤う6月。
箱根山では様々な緑が生まれ育ち、ここに住む動物たちの日々を彩っています。

本日のアトリエガーデン、森からのお客様は鹿でもイノシシでもなく
長い毛並みをモッフリなびかせたタヌキ君。
束の間の晴れ間を楽しみ、キジ助の食べ残しをつまみ食い。
そして...思わず見惚れてしまったのはその後の行動です。
とても慣れた足取りで野鳥がよく訪れる水場へと向かい
たまたまそこに転がっていた丸太にヨイショっとよじ登ると
2本足で立ち上がりながら美味しそうに水分補給をしているではありませんか。
それは放置してある古い一輪車に、雨水がたっぷりと溜まってできた野鳥の水場です。
普通ならタヌキ君の背丈ではとても水面まで届きません。
ですが何の躊躇する事なく真っ直ぐにそこに向かい
軽やかに階段を登るように丸太を使用して水をゴク飲みしていたところを見ると、彼は相当慣れている!
この一輪車、今では空を飛ぶものたち以外も利用する人気の水場と化しているのかもしれません。

そして数日後の、ある日。
アトリエで仕事をしていると、何やら外からちいさな音が聞こえてきました。

「コトッ…..カタカタッ!」

「ん?郵便屋さんが来たのかな?」

そう思って窓からウッドデッキを見てみると…
なんと!
そこには郵便屋さんとは似ても似つかぬ姿があるではありませんか!
モッフリとした黄金色、そして目の周りにパンダのような模様のうっすらとついたこの姿…

アナグマの登場です。

かなりご立派な体格でしたので、おそらくオスなのでしょう。
重量的には水を飲んでいたタヌキ君の2倍はあるかもしれません。
庭で何度か出くわした事はありましたが
ウッドデッキ上にまで平気で登って来るようになっていたとは恐るべしです。
あぁ、この瞬間にカメラを持っていたら!と後悔しつつ、動けずにそのまま凝視していると
そのアナグマは、特に急ぐわけでもなく
のんびりと、しかもとても慣れた様子でウッドデッキ上を歩き回り、チラッとこちらを見ました。

「おぉ〜っ❣️」

慌ててカメラを取りに行こうか、いや、その間に間違いなくどこかへ行ってしまうだろう。
撮りたい!でもこのまま見ていたい!あぁこのチャンスにスマホすら持っていない!!
そんなジレンマに苛まれながらフリーズしていると
彼はたっぷりとした体をモフッモフッと左右に揺らしながら
庭へと戻る木製の階段を降りて行きました。
その途中でまたチラッとこちらを見たあの表情が、またなんとも言えず可愛い。
夜行性であるとは聞きますが、私がこのアナグマ君に出会うのはいつも明るい時間、日中です。
ほぼ毎日庭に訪れるキジ助といると
まるでこちらに目を向ける事もなくのんびりと私たちのすぐ近くを横切って行ったり
庭の隅で何やら地面をモフモフしていたり
大中小と親子3匹で、1列に並んで移動して行ったのを見た事もあった程なので
既にこの庭のメンバーズカードを持っているような、常連さんの存在です。

様々な動物たちが笑顔を運ぶアトリエの庭。
そんな6月のある日、ポストには1通の封書が届きました。
見ると表面には町役場の印刷が。
この時期に役場から来る手紙?なんだろう? 健康診断のお知らせか、はたまた税金関係か...?
気になって早速開けてみると…
あれ?
奥の方に何やらポチ袋的なものが見えるではありませんか。

「おめでとうございます!箱根町健康推進課より、厳正なる抽選の結果あなたにQUOカードが当たりました!」

なんというプレゼント!
しかもちょうど良い事に、もうすぐ誕生日のタイミングでした。
いつの間にこんなキャンペーンが行われていたでしょう...?
ただただ毎年恒例の健診に通っていただけでこんなステキな事があるなんて!

「本当のプレゼントは自分の健康だね!」

ポチ袋と同封された手紙にはかわいいイラストとこんなメッセージが。全くもってその通りですね!
年齢のコレクションに数字が増えたこの6月。
歳を重ねるごとにさらに健康管理はガンバラナケレバと、改めて思う瞬間でございました。

雨の合間のひととき。
窓の外を見ると、ふわふわな毛並みがまだ新しいメジロのヒナたちが
思いっきり羽を動かしながら、親鳥の後を追うように緑の間を飛び回っています。
コゲラファミリーの奏でる、樹々を軽快に叩くリズム。
シジュウカラカップルの響き渡る美声。
その奥を、雨を運ぶ6月の雲が染めてゆきます。
月のしずくのような雨粒が、これからまたしばらくは降り続くのでしょう。
そのたくさんの水音と優しい時の流れの中で
今月もアトリエでは、新たな色彩が生まれています。

2025年6月14日 潤う大気に包まれた、アトリエの庭より。
高野倉さかえ

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