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木の上のシェアハウス


やわらかな風が草むらの春スミレを目覚めさせる頃。
箱根の森では野鳥のコンチェルトが響き渡ります。
ウグイス、メジロ、エナガやシジュウカラ、そしてカラフルなヤマガラ。
長い長い冬もいよいよ終わりです。
朝晩の気温はまだ、一桁ではありますが、
太陽が顔を出す日中は、暖かさも16度程度まで上昇するようになり、
そろそろ衣替えをしようか、
いやいや、山を甘くみてはいけない、寒の戻りがあるからもう少し待とうか…と、
芽吹き始めてきた木々を横目に、ポ〜っと迷っていると、
「コンココン、コココンコン♪」
窓の外で何やら音が。

「ん?キツツキのコゲラさんかな?」
そう思って見てみると、小さな鳥が巣箱の入り口をクチバシで叩いているのです。
ヤマガラです。
庭に設置した3つの巣箱。
そのうちアトリエ窓のすぐ前に見える物件を、どうやらこのカップルが気に入ったようです。

さあ、早速家具を運びこまないと!
小さなクチバシいっぱいに苔のような緑をくわえ、忙しそうに新居に運び込んでいます。
一度にあまりたくさん持って来すぎて、入り口に入らなかったこともあるほど。
「コココン♪コココン♪」
何かの合図の音なのか、
それとも少しふっくらしてきた奥さんがやや入りにくいのか、
まるで玄関拡張工事でもするかのように、入り口周辺をよくクチバシで叩く仕草が見られます。
そして部屋を片付ける奥さんに、頻繁におやつを運んできてあげるダンナさんヤマガラの姿。
ついつい見とれてしまう、可愛さです。

そんなある日、緑の中で大騒ぎが。
入居を決めた彼らが数日前から苔を運びこんでいる巣箱に、
なんとシジュウカラが入ろうとしているのです。
「ビョービョービビョーっ!」
いつもの可愛らしい小鳥とはまるで別ものの激しい声。
相手を威嚇して追いかけるヤマガラ。そして負けずに何度も戻って来るシジュウカラ!
その周囲ではメジロのカップルまでやって来て…なにやら大変なことになってきました。
他にまだ2件も空き家物件があるのに、
なぜ今年はこの場所にだけ人気が集まってしまったのでしょう?

その後もヤマガラが帰って来ては中に入り、
彼らの出て行った数分後にはシジュウカラがベッド材料を運び込み…と、
なんだか交互に巣作りが続いています。
みんなでシェアする...つもりなのでしょうか?

毎年新しい春のかたちが、森を賑やかに彩っています。

2016年4月16日
高野倉さかえ

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