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おしゃべり大国イタリア


「イタリア人は話好き」

みなさん、そんなイメージ、ありませんか?
実際暮らしてみると、そう、やっぱりその通り。
というより、もしかすると想像以上かもしれません。

イタリアで暮らした20年の日々。
思い返せば、そこは言葉の嵐でした。

バスや電車などの交通機関は、乗客もそうですがそもそも運転手が喋りっぱなし。
店のレジ前などで知り合いに出会ってしまうとさぁ大変。
後ろの長い列など全く気にせず長話が続き、並んでいる人々も呆れ顔。
バールや広場でも、隣に座る見ず知らずの人々との会話があっという間に始まってしまう、おしゃべり大国です。

それはガス会社のコールセンターに電話をした、ある日のこと。

「この名前だと、やっぱ外国人だよね?」

引越し手続きのため住所と名前のスペルを伝えると、
受話器の向こう側の係のお兄さんが、そんな質問を投げかけてきました。
「日本人です。なぜ?」
「いや〜だってさ〜、言葉の感じは普通にトスカーナ弁だし、
でもこの苗字聞いちゃうとさすがにイタリア人じゃないよな〜って気になっちゃってさぁ。」
肝心のガスの話はそっちのけで、彼の話は続きます。
「で、この国に来てから何年目くらいなの?
日本かぁ〜行ってみたいなぁ〜。寿司って美味しいよね〜♪」
そんな勢いで、どんどん無駄話が膨らみ、おしゃべりが止まらない状態に。
こんなに長い無駄話をしていて彼は上司に叱られないのだろうか?
いや、それより私のガスはちゃんと開通するのだろうか?などとやや心配になっていると、
話はようやく本題のガスの方向へ。
「で、日本のガス会社ってどんな感じ?」
あぁ...またそちら側へ話が…。

その後も何度となく話が脱線しながらも、コールセンターとの会話とは思えないテンションで話は進み、
最後にはすっかり友達のようなノリでまたね〜と気持ちよく終了。
さすがに電話ではナンパされなかったものの、笑いに満ち溢れたとても楽しい時間を過ごさせていただきました。
それにしても...無料ダイヤルで良かった!

さぁさぁ、次は電気会社に電話をしなければ。
のんびりしていると今日の受付時間が終了してしまう!
受話器の中から流れる待ち時間のメロディーがすっかり耳に残り、
握りしめた電気料金の伝票がやや落書きだらけになってしまった頃、ようやく電話が繋がりました。
「珍しい名前だよね? どこの国から来たの?」
あぁ、ここでもまた...話が長く...!
今日中に水道のコールセンター、そしてインターネット会社まで制覇できるだろうか?
引越しをする度、毎回かなりドキドキしたものでした。

そんな賑やかなそしてドキドキのあの国へ、来月からお里帰りをしてまいります。
日本の便利さにすっかり慣れてしまった体が驚かないといいのですが。

空が遠く高く、美しい秋。
懐かしいトスカーナの田舎町では、そろそろ収穫や蒔の確保に大忙しの季節です。

2018年10月23日
高野倉さかえ

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