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ぽってりナイチンゲールとパセリの木


木洩れ陽が好きです。
次々と変わりゆく光の形が揺らめき、踊る。
歩いている私を照らす木洩れ陽、
大地に、そして道にふわふわと映る木洩れ陽、
窓辺に輝く木洩れ陽。
暖炉や薪ストーブの中の炎をみつめる時のように、
木洩れ陽を見ていると時間を忘れます。
長雨の合間の、まだ雲の広がった日に突然
「ふわっ」と現れる木洩れ陽はなおのこと。
森の緑が明るくやや半透明に色を変化させてゆくその瞬間に出逢うと、
なんとも言えず心が癒されます。

そんな木洩れ陽の恋しい、そして美しい季節になりました。

箱根アトリエでは
早春から夏まで、かなり長い期間ウグイスの美声が響き渡ります。

「ナイチンゲールを見ると、しあわせになれるんだよ」

以前イギリスからの友達にそう教わりました。
ウグイスはなかなかその姿を人前に現さないことから、
そんな言い伝えのようなものが出来たのかもしれません。
そんなことより、
「え?ナイチンゲールってウグイスなのー!?」
聞き覚えのあるその名前がまさかウグイスだったとは…ちょっぴり衝撃を受けたものでした。

たちまち興味が膨らんで、あれこれ調べてみると、
イギリスのnightingaleは西洋ウグイス、
鳴き方が日本のそれとはちょっぴり違うようです。
夜に泣くことが多いという説もあり、サヨナキドリとも呼ばれるとか。

そういえば、ウグイス色とよく言いますが、
実際会って見ると、ウグイスはあまりウグイス色をしていません。
一般的にいうウグイス色は、どちらかというとメジロ色に近いように感じます。

そんなウグイス色をしていないウグイスさんに、今朝ばったり、至近距離で出会いました。
目の前で美しく歌う姿は、思った以上にぽってりと丸く、
「ホ〜ホケキョッ♬」とする度に、それに合わせて羽を細かく震わせているのがわかります。
「そうか!羽と体全体の振動で音程をつけているんだ!」
眠たい目を二倍の大きさにして早速観察スタート。
するとぽってりウグイスさんは、目の前の枝に止まって「ホ〜ホケキョッ♬」の実演をしてくれました。
「ホ〜♬」の歌い始めは、体を穏やかに少し空の方に。
その後はすぐ、羽を高速で閉じたり開いたりしながら、締めの「ホケキョッ♬」の発声をします。
こんなにじっくり近くで観察できたのは、初めてかもしれません。

ほんの数分間の出来事。
でもそれは、まるで1時間のコンサートを楽しんだ後のような幸福感です。
メイン歌手のウグイスさんが遠くの枝に飛び去って行くと、
残った私はなんだか感動でポカ〜ン。
そして気がつくと… あ、口もポカ〜ンと開いていました。
幾つになっても中身はまるでちいさい子供です。
ぽってりウグイスさんにも、ちょっと笑われたかもしれませんね。

庭では今年も、様々な種類のハーブが育ち始めています。
色とりどりのセージが陽気にあちこちで花開き、
レモンバームやタイムにローズマリー、
そして数年前に種をまいたイタリアンパセリの葉も広がり始めています。
特に驚きはこのパセリ。
地上部分の葉は冬になると枯れ、消え去ってしまうので、
春先まですっかりその存在を忘れてしまっているのですが、
暖かい季節がやってくると同時に
「ご無沙汰です〜♪」と言う雰囲気で、あれよあれよと言う間に大きくなってきます。
吹いたらなくなりそうなあのちいさな種から育ったとは思えないほど、
1年目の発芽率も素晴らしかったですが、
2年目の今年は、幹が尋常でない太さになり、
背の高さもそろそろ1メートルに達する勢いです。
年々巨大になるこの姿を見ていると、どうしてもジャックと豆の木を思い出してしまう。
もう何年かしたら、私もこのパセリの木によじ登って、雲の上の世界をチラ見したりできるでしょうか?

梅雨の合間の、木洩れ陽の溢れる木曜日。
今日は野鳥たちの歌も賑やかです。

2019年6月13日
野鳥たちの美声に潤う箱根の森より。
高野倉さかえ

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