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Giardino Selvatico 豊かな野生の庭


5月。藤の香りが大気に立ちこめています。
誰もいない緑の小道。
木洩れ陽の揺れる中、目を瞑って深呼吸です。
美しい季節になりました。

アトリエのウッドデッキでは、その藤の花を逆さまにしたような「登り藤」とも呼ばれるルピナスが
そよ風に揺られて甘い香りを放っています。
昨年までは地植えをしていたのですが
キジ助の彼女に美味しく食され、あまりにも絶滅続きだったので
今年は無事に育つようにと、安全なウッドデッキ上のプランターで育てています。
庭に頻繁に訪れる野生動物たちも、流石にデッキ上まではいらっしゃらないようで
現在のところは全て無事。スクスクと成長しております。

そんなある日の事。
長く長く空に向かって伸びていた1本のルピナスが
強風に煽られたのかポッキリと折れお辞儀をしていたので
その部分からカットして花瓶にさし、アトリエ室内に持ち込みました。
たった1本のルピナスの花。
ですがその存在感は素晴らしいもので
あっという間に室内が美しい香りで隅々まで満たされゆくのがわかります。
一瞬外に出てまた戻ると、ついつい目を瞑ってうっとりと酔いしれてしまう程。
「あぁ〜🎵」
なんとも言えない可憐な香り。癒されます。

花々の増えるこの季節。
先日山を降りた際には、街のJAでアレナリア・モンタナの花苗に出会いました。
こんもりと元気に咲き誇り、なかなか良い状態の苗です。
1ダースほど買い込み植え付けると、昨日まで野生味溢れていた庭の景色が断然変わりました。

「また今度みつけたら、もう少し買い足して来よう!」

少し庭らしくなった我が庭の景色に嬉しくなり、そう心に決めていた…ある日の事。
出掛けて帰宅すると、庭の雰囲気が違っている事に気づきました。
あれ?何が違うのだろう?
何やら華やかさがなくなったような…とようく見てみると…
さっきまで並んでいたアレナリアの白い花の列が、キレイすっかり消えているではありませんか!
近づいて地面を見ると、ところどころほんの微かに根っこのカケラは残っているものの
上の花の部分がバリッと完全にかじり取られているのがわかります。それも全て!です。
そしてその周囲には、あぁ、何者かの細い足跡が。

鹿です...

おそらく美味しさが違うのでしょう。
同じく白い花なのに、イベリスもノースポールも手付かずで無事。
しかしこのアレナリアだけが完全に食されておりました。
それにしてもこの鹿、イノシシと違い、食べ方がエレガントです。
周囲は全く荒れておらず、好物の花だけをキレイに食べてそうっと去って行く…おそるべしです。
こんもりと大きく満開だった白いアレナリアはあっという間に消え去り
元の野生味溢れる庭の風景が帰って参りました…たった3日で!(泣)

「フェッ!フェッ!」
先日は庭でキジ助が鳴いた瞬間、地震がありました。
すっかり私たちに慣れてしまったキジ助ですが、まだ野生が残っているようです。
ワイルドな山の庭は、毎日が発見。今日も自然の色彩に満ちています。

2025年5月5日 野生味溢れる、アトリエの庭より。
高野倉さかえ

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