□23400秒の旅
 低気圧が突如イタリアを襲った5月。しかし月末に近づき日中は30℃の暑さで、街行く人々の服装もすっかり夏。毎年の事とはいえ、季節の変わり目が本当にいきなりな国だなぁと思う今日この頃です。
 そんな今月、心にやわらかな微笑みを残して、大切な方々が空に旅立ちました。アトリエ窓も空からの涙を見るように、毎日冷たい雨に濡れていました。この時期には珍しい、長い長い雨です。
 そして突然思い立ち、荷造り。ピエモンテの雨雲から逃れるようにトスカーナにやって来ました。生まれて初めての長距離運転一人旅。スイス国境に近いビエッラ・アトリエを出てから高速入口に辿り着くまでは、水田に囲まれた平野を眺めながら約1時間。そしてナビに言われるがまま高速に乗ると、車はまずアレッサンドリア方面に向かいます。高速に上手く乗れた事で安心したのか、ここで突然お腹が空いて来てしまい、早くも最初のサービスエリアへ。現実逃避なのでしょうか、まだ旅路は長いのに妙にゆっくりと座って食事。ここで満タンに給油して再出発。そして車はジェノバの海沿いに入ります。その昔、海洋国家として栄えたジェノバですが、高速とは思えない狭くて細かなカーブの続く道路は、いつも渋滞で大騒ぎ。手に汗握りながらのハンドルさばき、そして緊張をほぐそうと歌いながらなんとか大難関を通過…! その後は海を右手に、トスカーナの海岸沿い・ヴィアレッジョまで降りて行きます。そこで約10分間突然の大雨に出逢い、大きな虹の門をくぐりながら内陸部フィレンツェへ。6時間半の長旅を終えた後に見るトスカーナは、ラベンダーが咲き、ローズマリーが風に揺れ、もう夏の香りに染まっていました。無事辿り着けて…良かった。

2010年5月30日 初夏の香りの漂うトスカーナより。高野倉さかえ

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