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揺れる春の日


 合計24時間の長旅を終えイタリアへ帰国すると、空気はもう育ちざかりのハーブの香りでいっぱい。
小鳥のさえずりも、空に浮かぶ太陽も、すべてがのどかな春です。

 しかしながら先日の大地震、驚きました。
こちらから震源地のラクイラまでは直線距離で約200km。
家も街も私のゾーンは運良く無事でホッと一息…ではあるのですが、
実はここだけの話、その時の私は爆睡していて全然気もつかなかったのです。
それはイタリアに帰国して間もなくのある日。
「大丈夫?」というタイトルのメールが数十通。
おや?と思ってテレビをつけると…大地震ニュースがっ?!
時差ボケもありそれはそれは深〜く眠っていたようなのですが、遠く離れた日本の皆様からこちらの地震を教えられるとは。
もう少し震源地に近かったら、きっと落ちた屋根の下でまだぐっすり熟睡している事でしょう…なんて。

 しかし地震は無事乗り越えたものの、帰国して早々、強力なインフルエンザにかかりしばらく寝込む始末。
思うと39度の熱がこんなに長く続くのなど久し振りです。
そういえば20歳のころ麻疹にかかり、救急車で運ばれ1週間ほど入院した事があったなぁなどと、
熱に揺らめく窓の外の太陽を見上げながら、気分はあの遠い昔の日本に大旅行。
そしてそんな朦朧とした夢から覚めた私の横には今、編み目がギュッと詰まった妙な水色の毛布があります。
復帰第1弾でまずは大量に洗濯をしたのですが…熱にやられて洗濯方法を誤りました。
たっぷり大きくて、綿菓子のようにふわふわと柔らかかった愛用品は今、
2サイズほどギュッと縮小され、玄関マットのような堅さで再デビュー。
大のお気に入りだったのに…この水色の綿菓子毛布。

 ふと今、夏の来る香りがしました。トスカーナは再びいい季節を迎え始めています。

2009年4月10日
野良猫たちが激増中の田舎町より。
高野倉さかえ

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