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キャンティ・アドベンチャー


 ここは赤ワインの名産地・キャンティ。新しいアトリエです。
秋の深まるトスカーナの森に囲まれたこのゾーン。
今まで作ったアトリエの中でもここがピカ一の田舎度でしょう。
大きな暖炉のある石積みの家はその昔水車小屋として使われていた建物で、今でも隣には小さな川が優しい水の音楽を奏で続けています。

 そんな村での新しい生活はすべてが自然色。
携帯の電波もインターネットもなぜかお天気に左右されついたり消えたり。
愛車のフィアットもあっという間に自然と一体化した土色に。
なぜならこの秘境にたどり着くには、長い無舗装の超難関「いろは坂」を制覇しなければならないからです。
しかもガードレールの存在しないこの道の脇はすぐに崖。
ひとつカーブを誤れば車は崖下の森の中へ突っ込みます。
運転の下手な私には毎日がアドベンチャー。
右へ左へと細かく不規則に曲がる急な坂道を上下するフィアットは、まるでジープにでも変身したような錯覚をおぼえるほど。
そしてハンドルを握るのはインディー・ジョーンズ!
周囲はフクロウあり、ウサギやキツネありの野生動物の宝庫。
特にイノシシには十分な注意が必要です。衝突すると車の方が敗北するそうなので…。

 そしてキャンティはもうすぐ一足早い冬を迎えます。
ご近所も慌てて暖炉の準備。
アトリエにも本日、唯一の暖房源であるトラック1杯の薪1000キロがようやく届きました。
しかし配達人の仕事は庭に薪を下ろすだけ。そびえ立つ薪の山を少しずつ家に運ぶのはこちらの仕事です。
その大変なこと大変なこと…明日は間違いなく筋肉痛に悲鳴の予感ですが、今晩はとりあえず暖炉で美味しく料理が始められそうです。
晩秋の小さな幸せのひととき。外では収穫を目前にした葡萄畑が重そうに果実を抱えています。
それにしてもインターネット再接続は…一体いつ…??

2010年10月13日
山盛りの薪が微かな香りを振りまくアトリエより。
高野倉さかえ

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