Sakae Takanokura

Home
Oil Paintings
Photography
Photolitho
Profile
Blog
Atelier


銀色週間と森からの訪問者


シルバーウィークというものの存在を初めて知ったこの9月、
元箱根アトリエは緑のバリエーションも豊かに秋を迎えようとしています。
庭ではラベンダーが今シーズン最後の花を咲かせていますが、
標高800mの山はすでにひんやり。
一雨一雨やってくる寒さに喜んだのか、
庭では早くもムスカリが一気に伸び始め、
冬を青く彩るあの花々がもうここで咲いてしまうのか?!と心配していたら、
ある日、森の中からひょっこりとお客様が現れました。

Cinghiale…….イノシシのファミリーです。
夜中に晩餐会でも開いたのでしょう。
朝起きたときには、ムスカリ街道がすっかり掘り起こされ、
元気に伸びていた長細い葉も、バラバラと土の上に撒かれていました。
ようく見ると、キレイに球根のところだけかじって、葉を全部捨てている。
まるではじかみ生姜でもかじるように、美味しいところをカリっと食べて、茎から上は残す。
なんだかニコニコしながら球根をいただいているウリ坊たちの姿が眼に浮かぶような有様でした。
今年は庭の入り口付近に、野生のヤマユリが大きく花をつけていたので、
鼻を効かせたイノシシが子供達を連れて訪問したのかもしれません。

日中の窓の外には、様々な模様のキツツキのみなさん。
コゲラやアオゲラが時々やって来ては
「コココン。ココココン。」
軽やかなリズムで木々をノックしていきます。
筋肉などまるでなさそうな細い体なのに、工事現場のドリルのような激しい動き。
じっとみつめていると、首やクチバシを痛めやしないかと心配になってしまいます。

夕方になるとどこからともなくやって来た霧が、緑を乳白色に染め、
割りたての薪に見たこともないようなキノコの森を育てあげ、
そしてそのキノコたちも、陽光が射し始めるとあっという間に消えて行く。
もう忘れかけていた昨年の花が
季節を迎えてまた土の中から青々とした新芽を広げ、
二重の虹のかかる空の下
今年も再び多くの蕾をつける。

トスカーナの9月は夏一色。
でもここでは様々な季節が淡く重なり合ったグラデーション。
そして大地の鼓動、自然の不思議な魔法を
日々感じられるようなそんな元箱根アトリエです。
そして今宵はスーパームーン。
星たちとともに、輝く大きな満月に会えるでしょうか。
それとも...霧の向こうかな?

2015年09月28日
野鳥の囁きとともに。
高野倉さかえ

◀️前のエッセイへ︎︎
次のエッセイへ︎▶️️
エッセイの目次へ
(文章の転載はご遠慮ください)


Sakae Takanokura Official Web Site | Email: atelier@takanokura.com | ©2008-2022 by Sakae Takanokura. All rights reserved.