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氷の世界の贈り物


カレンダーの新しいページ。 風の音。
木々を揺らす真白な冷たい雪。
流れ行くのは野鳥たち。
そしてやって来た吹雪。

いつになく寒い冬です。

1日の最高気温が0度を上回らなくなり、
最低気温はマイナス二桁。
トスカーナはもちろん、北イタリアに移住していた時代ですら見なかったこの気温の数字。
とすると、私の人生の中で経験する、最も寒い冬なのかもしれません。

数日前に吹雪になり
ワイルドな庭がさらにワイルドな雪山状態に。
その後、太陽は出ているものの、
気温が低いので積もった雪がなかなか解けません。

野鳥たちはどうしているんだろう?と空を見上げていると、
この時期唯一の食料となるツゲの木の実を一生懸命食べています。
彼らの落し物で、雪も一部ツゲの実の色。
雪の上にふんわりと紫色がついています。

そんな中、ふと、もうひとつの紫色が視界をかすめました。
こぼれ種から咲いた、直径1cmほどのちいさなちいさなビオラの花です。
冬の初めに庭のあちこちから救出し、ウッドデッキの踏まれない場所に移植したビオラたちですが、
今回の吹雪にすっかり埋まってしまい、プランターは今でも一見真っ白。
でもそこに、ふんわりと差してくる陽光が、
ビオラの埋まっている部分の雪を、自然と丸く溶かしてゆくのです。
凍るような寒さの中、優しく開いたちいさな、そしてまあるい雪穴。
雪の中から元気に「ボンジョルノ!」するビオラに、大地のそして空からの暖かさを感じました。

こんな風に、季節が巡って、
こんな風に、冷たい中にも暖かさがあって、
そしてこんな風に、たくさんのものが生きている。

カキ氷のような雪の下で、ひっそりとそして力強く春を待つたくさんの色彩たち。
自然が作り出すちいさな贈り物に、絵筆が進みます。

頭の中に流れるのは、ウィーンフィルのあの曲。
1年の初めの日に、このウィーンからの音楽が欠かせなくなってから、もう何十年経つことでしょう。
世界中の90ヵ国以上で放送されるという、ニューイヤーズコンサートのライブ画像。
イタリアでは1年で最初のランチタイムを彩っていたこの音楽も、ここ日本ではディナータイム。
そして地デジの届かない驚きの元箱根アトリエでは、ちょっぴり遅れて録画版DVDで楽しむようになりました。
毎年恒例の、感動の暖かな涙を流す。
今年は久々にイタリアの指揮者リッカルド・ムーティー氏を迎えたウィーンのホールは、
2018年の始まりに一層豊かな色彩を与えてくれました。

そういえば、ウィーンの冬は本当に寒かった!
それでもマイナス14度には...程遠かったような...??
やはり今回の冬が人生で一番寒い冬になりそうです。

今日も箱根の空は、澄んだ青に輝いています。

2018年1月26日
高野倉さかえ

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