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ヒースと妖精の枝豆


空も吐く息も少しずつ白くなり始めた元箱根。
毎朝起きて見る屋根の色もまた、氷に包まれて白く、
数日前には初雪も降り始め、今年も順調に真冬へとまっしぐら。
夜になると掛け布団の上をずっしりと猫文鎮が乗っています。

そんな山の上の冬。
庭は色彩数も少なく、ビオラがなければまるですべてがブラウン系に染まって見えます。
買い出しに下界に降りると、必ず立ち寄るお花屋さん。
「耐寒性・強」との表示がある数々の花々を試しましたが、
標高800m強のこの元箱根では耐寒性をほぼ感じられないまま、
いつの間にか土に還ってしまいます。

その中で唯一咲いているのがビオラたち。
霜が強く降りる朝には、すっかり浅漬け漬物のようにしなってはいるものの、
お陽様さえ顔を出せばまた力強く起き上がって花を咲かせます。
花が終わった後、枯れたように見える穂先たちも、
目を凝らして観察すると、驚くべき量のタネを身につけている。
妖精の食べる枝豆のような、ちいさなちいさなサヤ。
そうっと指で開けてみると、0.1ミリほどの細かいタネたちがパッと弾けます。
そして夏を迎えると、このこぼれダネたちが
庭中で様々な色のミニミニビオラたちを咲かせるのです。
砂利の間からも、何事もなく元気に顔を出す超小型ビオラ!
うっかり踏んでしまいそうな場所にもモリモリ生えてくるので、
見つけ次第、早速安全なゾーンに植え替えるのですが、
ふと地面を見る度に山ほど目に入ってしまい、植え替え作業についつい時間を取られてしまいます。

そんな我が家の庭に、今年はカルーナが初登場しました。
別名ヒースとも呼ばれるカルーナは、米粒ほどの小花をつけるツツジ科の植物。
エリカとも近縁とのことで、寒さの厳しいヨーロッパの枯れた土地でも生き抜きます。
箱根は寒さが強いですが、枯れた土地ではなく湿気がたっぷり。
そうするとどうだろう...?と毎日ご機嫌を伺いながら手入れ中です。
そういえば箱根初年度に植えたエリカも、
葉は青々としてはいますが、ひと冬越えるとめっきり花をつけなくなってしまいました。
北イタリアの庭で育っていた植物たちも、この元箱根では必ずしもOKではないようです。
新入りさんのカルーナ。来年の冬、またこの場所で花開くでしょうか?乞うご期待です。

皆さま、本年も大変お世話になりました。
皆さまの暖かいご声援を受け、笑顔に満ちた素敵な1年を過ごさせていただきました。
カレンダーはもうすぐ2018。
新しい年が皆さまにとって美しい色彩に満ちておりますように。

アトリエより心からの感謝を込めて。

Vi auguro Buon Natale e un meraviglioso anno 2018!
2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2017年12月21日
高野倉さかえ

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