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Artemis ペーパームーンと月への旅


それはちょうど、アトリエで緑の月のイメージを描いているところでした。
長年続いているアルテミス計画の月飛行が、いよいよ近づいて来たというニュースが耳に入ったのは。
アポロ計画から半世紀超。月へと向かう船が現実になるとはなんと心躍る事でしょう。
その日はNASAのライブ中継に釘付けになり
ここからは全く何も見えないにも関わらず、何気なく夜空を見上げる回数も増えました。
月への旅。
様々なニュースを見ながら、前回アポロ計画の際に大人だった多くの方々の
言葉にならない胸の高鳴りを私も実感できたような想いがしました。

「アルテミス計画」
今回はその響きにもとても惹かれました。
前回の計画名「アポロ」の双子の姉で(妹という説もあります)、しかも月の女神とあれば
彼女の名前より適任なものは他にないでしょう。
そしてそのアルテミス計画の中で、宇宙飛行士4人を運ぶカプセルの名前がオリオンとは!
神話では結ばれなかった2人が、ここでは共に手をとって月を目指すような
やわらかなイメージが心いっぱいに広がりました。

アルテミスという名前は、自然や植物など様々なものたちの中にもみられます。
このアトリエの庭にも、月の女神に由来する学名を持つ植物が育っています。
その名もアルテミシア(Artemisia abrotanum)。英名ではサザンウッドと呼ばれるヨモギ科の低木です。
山の寒さが厳しすぎるのでしょうか、冬時期には毎回まるで枯れたような有様になってしまうのですが
今年も無事に再生し、今月は緑の葉を広げて参りました。
触れると驚くほどコーラにそっくりな香りがするこのハーブは
どこかの言い伝えでは、乾燥させて枕に入れるとよく眠れると聞いたことがありますが
この独特な香りのせいで、コーラをがぶ飲みする夢でも見そうな気もしてなりません。(笑)
その花言葉は「守護」「直感」そして「夢」。
アルテミスの聖草と呼ばれ、女性の健康を守る薬草として昔から重宝されているようです。

月をぐるっと一回りして、いよいよ地球に帰還するその日。
円錐形の機体が銀色に輝くライブ映像をみつめながら、目頭まで潤って来ていたその瞬間。
感動で熱くなる胸の中では、ふと、こんな想いも。
「機内にいる宇宙飛行士の皆さまは、一体どれだけ強靭な体力を持っているのだろう」
あんなにグルグルと回る物体に乗り、しかも太平洋上に着水した後でもあの高波と揺れ具合...。
波間での待機だけでも、1時間以上も続いているではありませんか!
あれで乗り物酔いしない人だけが宇宙飛行士になれるという事は百も承知ですが
激しい船酔い経験のある私には...ただただ驚嘆の極み。羨ましい限りでございます。
そして思うのです。
もしも女神様が現れて「月旅行」か「絶対に乗り物酔いしなくなる体」のどちらかを与えてくださるとしたら
迷わず後者を選ぶだろうと。

月へ一歩近づいた、この春。
月から帰る銀色のロケットを見ながらふと
頭の中では映画Paper Moonの曲が流れているのに気がつきました。
1930年代のポール・ホワイトマン管弦楽団の演奏する、あの古いメロディーです。
月を見上げてふと微笑んでしまうような夜は、この曲がよく脳裏をよぎります。
月の歌は星の数ほどあるのに、なぜなのでしょう。
「あなたが信じてくれればただの紙で作った月でも本物になる」
なんとステキな歌詞でしょうか。

Buona Primavera🌸皆さま、素晴らしい春を。

2026年4月19日
窓の外では恒例の春のサプライズ。こぼれ種で広く散乱したムスカリの濃青があちこちに咲き始めています。
山のアトリエより。
髙野倉さかえ

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