季節が変わると、窓からの陽光の角度が変わって来るのがわかります。 それに合わせて、作業机があちこちに移動して行くアトリエの室内。 衣替えはまだ先だけれど、机の向きで季節の変わり目を感じる。 今年もそんな季節がやって来ました。 お陽さまの光で感じる、春の予感です。 新しい角度に決まった作業机で描く作品たち。 筆の動きも自然光で見る花々も新鮮に感じます。 今月は庭に初のクロッカスが登場しました。 四つ足で歩く森の住人たちがよく訪れるアトリエの庭。 新しい花々が見つからないように気をつけて植えてはみたものの 翌朝にはあぁ早くも森からのお客さまに見つかってしまい、幾つか掘り起こされておりましたが 明るいイエローの花々が真っ直ぐ空を見上げて咲く様子は、とても愛らしいです。 そういえば、このクロッカスについて最近ある発見をしました。 ある日、海外ニュースで農産物の特集を見ていると 世界で一番の高価なスパイス・サフランについての映像が流れ出しました。 生産者の方々は、乾燥した大地から真っ直ぐ上を向いて咲く薄紫色の花の中から 赤褐色の細いヒモ状になっているオシベたちを、1本1本、それはそれは丁寧に手で摘んで行きます。 その映像を見ていて思ったのです。 葉っぱの姿があまり見えず、大地からとても低い位置でいきなり花が開き出す、この独特な咲き方。 サフランの花を実際に見た事などないハズなのに...どこかで見た事があるような...? しばらく思いを巡らせた後、ふと、ちいさな球根から直で咲くクロッカスの姿を思い出しました。 これだ!妙にクロッカスに似ている。 そこで検索を始めてみたら...なんとなんと! サフランの別名が目に飛び込んで来たではありませんか。 「秋咲きクロッカス」 「...え!サフランってクロッカスだったの?!」 この瞬間、頭の中に仕舞い込んでいた古い電球にピカッと灯がともったような、なかなかの衝撃を覚えました。 一方クロッカスの別名は「花サフラン」「春サフラン」。 なるほど。なかなか紛らわしいですね。。 同じアヤメ科クロッカス属の姉妹種であるらしいこのサフランとクロッカス。 サフランが秋に開花期を迎えるのに対し クロッカスは一部だけ秋咲きのものがあるとはいえ、その多くの品種は初春に咲き始めるようです。 学名を見ると両者とも「Crocus」という名を持っており サフランは「Crocus sativus」、一方クロッカスは「Crocus vernus」と記されていました。 調べれば調べるほど、サフラン=クロッカス度が増してゆき、すっかり面白くなってしまいました。 雪が溶けきらない時期でも咲き始めるような、春一番を告げる花クロッカス。 そして赤く長いオシベがなんとも言えない良い芳香を放つサフラン。 さてさて、明日の食卓には久し振りにパエリアでも並べてみましょうか。 それには食材を調達しに山を降りなければ! サフランのオシベの色を見つめながら、そんな事を考える春の始まり。 そして庭には再び、白い雪が陽光に包まれ輝いています。 2026年3月8日 窓辺のヒヤシンスもようやく開いた...アトリエの窓より。 高野倉さかえ