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粉雪の予感と12月の宝箱


先日のこと。
天気予報にいよいよの雪マークが登場しました。
その日は窓辺にガッチリと陣取って、
窓の外をチラチラ見ながらの制作です。

「もうすぐ雪が降るんだ」

そんな想いがあるというだけで、
絵筆はスイスイと軽やかに動き、
アトリエ作業は昨日とは打って変わって快調に。

今冬最初のひとひら。

屋根に当たる雨音が、
少しずつ、そして少しずつ静かになり、
真白な雪の花びらがもうすぐ、
あぁもうすぐ空から降ってくるんだ!
そんな想像が心をかき立て、
並行してやって来る雪搔きの労働などすっかり忘れて、ワクワクドキドキ。
そんなちいさなドキドキ感があるというだけで、絵の調子がここまで良くなるとは驚きです。

雪の予感。

それは形のない、微かな季節の彩り。
待ち焦がれて過ごす1日は長く、
絵筆を動かしながら見る空は、相変わらずの雨模様。
そして濃厚な夜の青がしっかりと辺りを包み込んだ頃、
雨音は、ようやく聞こえなくなりました。

「…残念。暗すぎてよく見えない。。」

そう思いつつ眠りについた晩。
翌日の朝は、雪窓を期待しながらの早起きです。
遠くの方から、ゆっくりと朝焼けに染まる空。
青からオレンジのバリエーションは美しく澄んだ空気を染め上げ、
屋根の上にはうっすらと、本当にうっすらとした粉雪の跡。
そこには、期待した一面の雪景色はありませんでしたが、
樹々にもところどころ数ミリ程度の雪が積もり、
早朝マイナス2度の空気に冷凍されて、かき氷状になって白く残っています。

朝陽を浴びた、冬の贈り物。
クリスタルの雫のようにあちこちで輝くそれは、
少し溶けるごとに、ツララとなって成長し、
大地からは霜柱が育ち始めます。
子供のようにしゃがみこんでようく見ていると…
なんだかムーミンに出て来るニョロニョロに似ているようで、ついつい微笑んでしまいます。

今年も、山の冬が始まりました。
庭にはすっきりスマートになった落葉樹たち。
しかしその小枝の先には、見るともう来年の芽がたくさん膨らんでいます。
冷たい空気に包まれた冬の間にも、
春のかけらがたくさん出来上がっているのですね。
さてこの冬はどれだけの種類の白をみせてくれるのでしょうか?

そして今日は12月8日。
毎年恒例の、そう、クリスマス飾りの箱を開ける作業が待っています。
それは、ごくありふれた、どこにでもあるような箱なのに、
想い出という宝石の詰まった、まるで輝く宝箱。
ひとつ包みを開けるごとに、懐かしい日々がふわっと蘇ります。

皆さま、今年もたくさんの素晴らしい日々を
そして暖かな笑顔を有り難うございました。
作家生活30周年を迎えたこの年。
皆さまの笑顔は絵筆を豊かな色彩に輝かせ、
アトリエでの制作を、美しく彩ってくださいました。
来年も皆さまにとって、喜びの色彩に満ち溢れた1年でありますように。

Buon Natale ed un meraviglioso anno 2020!
Con affetto e con l'augurio che i sogni del vostro cuore si possano avverare.

アトリエより、両手いっぱいの感謝を込めて。
2020年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年12月08日
澄んだ空気と煌めく陽光に包まれた...元箱根アトリエより。
高野倉さかえ

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